Sirtuin(SIRT1〜7)は、NAD⁺依存性の脱アセチル化酵素ファミリーであり、代謝制御、ゲノム安定性、ストレス応答、老化など幅広い生命現象に関与しています。近年では、SIRTは単なるヒストン脱アセチル化酵素ではなく、プロピオニル化、ブチリル化、ミリストイル化など多様なアシル基を除去する脱アシル化酵素としても機能することが明らかになっています。特にSIRT2やSIRT6の脱脂肪酸アシル化活性は、K-Ras4aやRalBの機能制御、細胞遊走、がん細胞の増殖などに関与しており、SIRTモジュレーターは基礎研究だけでなく治療応用の観点からも注目されています。
一方で、SIRT活性を評価する既存の蛍光プローブには、トリプシン消化を必要とする複雑な測定手順や、酵素非存在下でのバックグラウンド蛍光上昇、蛍光波長の短さなどの課題がありました。そのため、簡便で安定したワンステップ型の蛍光プローブの開発が求められていました。
研究室では以前、Dabcyl基をクエンチャーとして利用したSIRT活性検出プローブSFP3を開発していました(脱アシル化活性に着目したSIRT6活性検出プローブの開発)。我々は、この設計を発展させ、異なるペプチド配列やクエンチャーを組み込んだ複数のプローブセットを新たに設計し、また合成の簡便化も達成しました。これらのプローブについてSIRT1〜7に対する反応速度を評価した結果、特定のプローブとSIRTアイソザイムの組み合わせで高い選択性と感度が得られることを見出しました。
さらに、SIRT2に対して特に高い応答性を示すプローブを用いて阻害剤スクリーニングを実施し、新規SIRT2脱脂肪酸アシル化酵素阻害剤の探索に成功しました。本研究は、SIRTサブタイプごとの機能解析や創薬研究を可能にする、汎用性の高い蛍光プローブプラットフォームを提供した点で重要な研究であると考えられます。
(2021年修士卒 中嶋君による研究)
